司馬遼太郎『街道をゆく』
先日のトークライブ「歴史でおすすめの本は」と質問をいただいたので、
この『街道をゆく』を紹介しました。
歴史というより、紀行文といったほうが正しいのかもしれせんが、
司馬遼太郎さんが日本各地の街道、世界の国々を旅してまわりながら
歴史について、その町のエピソードについて、人物について深く深く掘り下げて書きあげている
素敵な作品です。
一冊で三冊分おいしい、といっても過言ではない本です。
この『街道がゆく』シリーズは、1971年に「週刊朝日」で連載が始まり
1996年2月に作者が急逝するまで続きました。
現在では朝日文庫から全42巻で出版されています。
私が好きなのは第5巻「モンゴル紀行」です。
このモンゴル紀行が書かれたのは1973年。ロシアがまたソビエト連邦時代。
冷戦の真っただ中でのモンゴル行きです。
今のように日本からの直行便はありません。
日本で唯一航路のある新潟空港からソビエトハバロフスク→イルクーツク(ここでビザが発行される)→モンゴル
という、今では信じられないようなルートでモンゴルへ入らなくてはならないのです。
タイトルは「モンゴル紀行」なのに本の3分の2はソビエト地域の話になっています(笑)
1973年の日本からモンゴルへの旅
2017年の日本からモンゴルの旅
およそ40年の間にソ連は崩壊し、そして日本の飛行機はもっと自由に世界を飛べるようになった。
このギャップを思い知ることができる。40年間の日本とソビエトの歴史がわかってしまうのです。
このシリーズは書かれた当時の地方の生活や歴史も知ることができる
民俗学的な側面も持っています。
「歴史、紀行」でひとくくりにはできない司馬遼太郎の知識の塊のような文章が
ギュッと詰まった良書です。
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